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コラム

家族信託のお勧め

2024.9.26

当事務所では、相続想定案件を通じて、家族の未来を切り拓く。
これらの方針で、相続で揉めないための事前のお手伝いをさせていただいています。
その一つが、家族信託制度の活用です。
 
家族信託は近年、相続分野で脚光を浴びている制度の一つです。
家族信託は、遺言や法定相続の枠組みと比較して柔軟性や安心感を提供するため、多くのケースで利用されるようになっています。
以下では、家族信託の優れている点を詳しく説明し、具体的な事例を挙げて説明させていただきます。
 

1 家族信託の概要

家族信託とは、財産の所有者(委託者)が特定の目的のためにその財産の管理・処分を信頼できる家族(受託者)に委ね、その受益者として自身や他の家族(受益者)を指定する契約です。
この信託契約によって、委託者が自らの意思に基づいて財産の管理・処分を決めることができ、信託期間中も一定の管理や利益の配分が確実に行われる仕組みが確立されます。
例えば、委託者である親が高齢や病気により財産の管理が難しくなった場合、受託者である子供が親の代わりにその財産を管理し、信託契約に基づいて家族のために財産を活用することが可能です。
 

2 家族信託の優れている点

家族信託は、遺言や法定相続に比べて以下の点で優れています。
 

(1) 柔軟な財産管理遺言

柔軟な財産管理遺言では、財産の分割や遺産の配分は遺言書に基づいて相続開始後に行われますが、家族信託では生前から財産の管理・運用が可能です。
例えば、高齢の親が自らの財産を管理することが難しくなった場合でも、家族信託を活用することで、子供や信頼できる第三者にその管理を任せることができます。
これにより、委託者は自らの意思で、誰にどのように財産を管理してほしいかを詳細に決めることができるのです。
 

(2) 介護・認知症対策法定相続

介護・認知症対策法定相続や遺言では、相続開始後に財産分配が行われるため、委託者が認知症になる前に財産管理を決めておかないと、その後は後見人が関与することになります。
しかし、後見制度には制約が多く、財産の運用が柔軟に行えないことが一般的です。
一方で、家族信託を活用すれば、委託者が認知症になっても信託契約に基づいて受託者が財産を適切に管理でき、委託者やその家族の生活費や介護費用に充てることができます。
 

(3) 回避家族信託

遺産分割争いの回避家族信託を利用することで、遺産分割をめぐる家族間の争いを未然に防ぐことができます。
遺言や法定相続では、相続人間での話し合いによって遺産分割が行われるため、意見が対立した場合、相続争いが発生する可能性があります。
これに対し、家族信託では信託契約に基づいて財産の管理や分配が事前に決まっているため、相続発生後の混乱を防ぐことが可能です。
 

(4) 節税対策家族信託

節税対策家族信託は、相続税や贈与税における節税対策にも有効です。
例えば、受益者を複数人に設定することで、財産が分割される際の評価額が下がり、相続税の負担を軽減できる場合があります。
また、特定の財産を早期に受託者に移転させることにより、相続時の財産総額を減らすことができ、結果的に相続税の負担を減少させることができるのです。
 

(5) 財産活用家族信託

特定の目的に応じた財産活用家族信託では、委託者が特定の目的を持って財産を管理・運用することが可能です。
たとえば、子供の教育資金や特定の家族の介護費用、あるいは将来の結婚資金など、あらかじめ財産の使途を指定することができます。
これは遺言や法定相続では実現しにくい特徴です。
 

3 具体的な事例

以下に、家族信託の実際の活用事例をいくつか挙げます。
 
【事例1】
高齢の親が認知症を発症した場合80歳のAさんは、家族信託を利用して自宅や金融資産の管理を信頼する長男に託すことにしました。
Aさんは認知症を患っており、自身での財産管理が難しくなってきたため、早めに家族信託を設定しました。
信託契約に基づいて、長男はAさんの介護費用や生活費の支払いのために金融資産を活用し、またAさんの自宅を必要に応じて売却する権限も持っています。
これにより、後見制度に頼ることなく、Aさんの生活を維持するための資金管理が可能となりました。
 
【事例2】
先祖代々の土地を守るための家族信託B家は、先祖代々受け継いできた土地を所有しており、その土地は今後も子孫に引き継ぎたいと考えていました。
しかし、複数の相続人がいるため、相続時に遺産分割が発生し、その土地が売却されてしまう可能性がありました。
そこで、B家の家長であるBさんは、家族信託を設定し、信託契約に基づいて土地を一括して管理することを決定しました。
信託の受託者には信頼できる親族が選ばれ、信託期間中はその土地が売却されることなく管理されることが保証されました。
このようにして、B家の土地は次世代にわたり守られることが可能となりました。
 
【事例3】
障害を持つ子供のための家族信託Cさんには、障害を持つ次男がいます。
Cさんは、自身が亡くなった後も次男が経済的に困らないようにするため、家族信託を利用しました。
Cさんは信託契約に基づいて、次男のために一部の財産を信託に組み込み、受託者に長男を指名しました。
信託の収益は次男の生活費や医療費に充てられるように定められ、信託契約に従って長男が適切に財産を管理します。
これにより、次男は長期的に経済的な安心を得ることができました。
 

4 結論

家族信託は、財産管理や相続対策において非常に柔軟かつ強力なツールです。
遺言や法定相続に比べて、家族信託は生前の財産管理が可能であり、介護や認知症に対する対策としても有効です。
また、相続争いの回避や特定の目的に応じた財産の活用、さらには節税対策にも貢献できる点で優れています。
家族信託を活用することで、委託者は自身の意向に沿った財産管理を実現でき、相続後の家族間の紛争を未然に防ぐことが可能です。
特に、高齢化が進む現代社会において、家族信託は今後ますます注目される制度となることでしょう。