財産分与で問題となる特有財産とは?
離婚はじめに
財産分与とは、夫婦が離婚に際して、婚姻期間中に築いた財産を公平に分割する手続きのことです。
分割対象となるのは、預貯金・現金・株式・不動産などがあります。
財産分与は、離婚の場面で一番の争点となることが多いです。
なぜかというと、単純に夫婦で財産を2等分する、ということはほとんどなく、夫婦の片方が単独で取得できる「特有財産」があると主張することが多いからです。
特有財産とは、イメージしやすいものでいえば、相続した財産、親からの贈与財産などです。
実際には共有財産と特有財産の区分が曖昧であり、争点となることが多いです。非常に判断が難しい問題なので、弁護士に相談されることをおすすめいたします。
ここからは、判断が難しい事例をあげて考えていきましょう。
具体的な事例
夫婦の一方の親から相続した不動産の扱い
結婚して12年になる夫婦が、離婚することになった。
3年前に妻の父親が亡くなり、実家(評価額:約2000万円)を相続している。
この実家について、夫婦共有財産となるか?それとも妻の特有財産となって、財産分与の対象外となるか?
相続財産は一般的には特有財産とされ、財産分与の対象には含まれないとされています。しかし、婚姻期間中に相続した不動産が夫婦の居住用として使用されていた場合、その不動産を共有財産とみなすべきか、あるいは特有財産として取り扱うべきかが問題になります。
特に、相続後にその不動産のリフォームや維持費を夫婦の共有財産から賄った場合、財産分与の対象となる可能性が生じます。裁判では、相続した不動産が夫婦生活のために使用され、かつ婚姻期間中にその価値が共有財産の出資によって増加した場合には、財産分与の一部として考慮されることがあります。
婚姻前に取得した株式の扱い
夫が、結婚する前に買った株があり、結婚後に株を売買したり、運用をしていた。離婚時、株価が大幅に上昇した額となっている。この場合、株式は特有財産となるか?
婚姻前に取得した株式や投資商品も特有財産に該当しますが、婚姻後にその価値が大幅に上昇した場合、どのように取り扱うかが問題です。婚姻後の株式の値上がりは、夫婦の生活費や投資によるものである可能性もあります。このような場合、財産分与に際して、婚姻後の増加分を共有財産として分与の対象に含めるべきか否かが争点となります。
裁判では、株式の価値の増加が夫婦の共同の努力や婚姻生活によってもたらされたと判断された場合、その増加部分が財産分与の対象となることがあります。
夫婦の一方が経営する会社の利益
夫が結婚前から代表取締役を務める会社があり、結婚後20年間代表を務めてきた。離婚することになったが、会社が有する株式などについて、夫婦共有財産となるか?
夫婦の一方が婚姻前から経営していた会社の利益についても、財産分与における難しい問題です。会社自体は婚姻前の特有財産として扱われますが、婚姻期間中にその会社が得た利益や増加した資産は、婚姻生活での貢献により生じたものであると主張されることが多いです。
特に、もう一方の配偶者が経営に直接的に関与していなくても、家事や育児を通じて間接的に支えたという主張がなされることがあります。
裁判では、婚姻期間中の利益の増加が夫婦の生活や努力に関連すると判断されれば、その利益の一部が財産分与の対象になることがあります。
まとめ
これらの事例からわかるように、財産分与においては、財産が共有か特有かの区分が問題となりやすく、婚姻期間中における夫婦の貢献や生活の影響を考慮して判断されることが多いです。
このように、非常に微妙な問題を含むのが離婚における財産分与の問題です。
ぜひ、経験豊かな弁護士にご相談ください。
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